2006年2月4日(土)に、第三回「博士の生き方」座談会(協賛:R&Dサポート)を行いました。場所は第一回、第二回座談会をおこなったときと同じR&Dサポートセミナールームです。
今回の座談会では、参加申し込み時に課題として、「『科学技術基本政策策定の基本方針の中間とりまとめ』の人材に関する項目を読んだ上で、これからの社会にとって必要な人材とはどのようなものかを、理由(例えば自分の体験を踏まえて、本で読んだことなど)も含めて書いてください」と求めていたにも係らず、30名もの方々が参加してくださいました。
参加者の方の内訳としては、学生が5名程度と少なく、30代の社会人を中心として40代、50代の社会経験の豊富な方々からの参加が多かったです。
今回の座談会では、来年度からはじまる第3期科学技術基本計画に目を通して見て、政府としてどのような方向性で施策をおこなっていく予定にしているのかを知り、その上で、社会にとって必要な人材とは何かということに関して参加者のそれぞれの立場や経験からディスカッションをおこなうことができたらいいなと思っておりました。
当初は、文部科学省の小野さんから「第3期科学技術基本計画」の「人材」に関して言及されている箇所に関して「科学技術基本政策策定の基本方針の中間とりまとめ」に基づいて、無味乾燥な文章でつづられている文章の背景となっていることやこれからの施策の方向性について解説をしていただく予定にしておりました。ただ、小野さんからの解説だけだと、「科学技術基本計画」とうものが、国の施策の方向性を定めるものであるので、その後の、各人の経験などに基づいたディスカッションとの関係を考えたときに、折角解説いただいたものを生かすことができないなと思いました。そのため、今回の座談会に参加申し込みをしてくださった方の中から、実体験として、基本計画の中で取り上げていることを経験されてきた方々から講演をお願いいたしました。具体的には、研究費の審査に係るプログラムオフィサー・プログラムディレクターのお仕事や応募に関してのお話、海外でのベンチャー企業での就労経験のお話、そして、日本でのポスドク経験のお話の3つです。3名の方にご講演をいただきましたが、快く引き受けていただけたこと、とても感謝しております。
当日、講演いただいた方々は以下のとおりです。
小野様からは、そもそも科学技術基本計画とは何であるのかというお話をいただいたあと、今回の第3期科学技術基本計画のポイントとして人材育成が盛り込まれていること、そして、今回盛り込まれている「若手研究者の活躍促進」「科学技術分野における女性の活躍促進」「社会のニーズに対応し、社会の多様な場で活躍できる人材の育成」「次代を担う人材の裾野の拡大」の4点について、そのような施策が行われる背景とどのようなことが具体的に行うことを考えているのかといった点についてお話をいただきました。 そしてご自身の私見として、今後の方向性に関しての残された課題について語っていただきました。その中で、行政を含む意識改革が必要として、誰が悪いのかという犯人探しよりも、個々人が何をするのかという「役者探し」ということが大切だと思うということをおっしゃっておられたことが印象に残りました。
※関係サイト:文部科学省の人材関連情報
※総合科学技術会議では、「科学技術基本政策策定の基本方針の中間とりまとめ」の後に、昨年末の12月27日付で「諮問第5号『科学技術に関する基本政策について』に対する答申」という正式な答申を出しています。
福士様からは、NIH(Natinal Institutes of Health)でグラントの審査・採択・打ち切りに係る業務をおこなうプログラムディレクター(PD)やプログラムオフィサー(PO)、グラント申請書類を分野細目に分け、審査委員のリクルートや審査委員会運営をお手伝いするScientific Review Administratorの仕事内容・待遇に関してお話いただき、Scientific Review Administrator(SRA)の有給インターンシッププログラムへの申し込み方法や審査方法に関して、ご自身の申し込まれた経験からお話をしていただきました。NIHのPOやPDが専任の職であるという点、それらの前段階であるSRAインターンシップへ参加するためには、今の職場を辞めていかないといけない点など、とても興味深い話でした。
中村様は、大学助手から、シリコンバレーの光関係のベンチャー企業の研究員に転じ、そのベンチャー企業が倒産後、日本に戻ってきたまでの経験についてお話していただきました。とても刺激的な内容でした。特に、光通信分野の成長予測の誤りから、所属するベンチャーが倒産寸前の買収となったとき、逆境の中からも新たなチャレンジの場をつかんだ経験談は、とても印象に残りました。
※関係サイト:中村様のエッセイ「コラム : Ph.D.は米粒? それとも?」
中谷様からは、任期付研究職について、職業としての魅力がどの程度のものなのかと いう観点から、お話をしていただきました。研究職に任期を付けるという制度が、競 争的な環境を醸成し科学技術の発展に寄与するというのは一面の事実であるかもしれ ないが、職業としての魅力を下げている一面もあるのではないか。研究者の多くは研 究が好きなだけの普通の人間であり、魅力如何では必ずしも研究職に進むとは限らな いという視点を制度を作った人々は忘れているのではないか、ということを述べてお られました。
本来であれば、4名の方からのご講演の後に、ディスカッションをおこなう予定にしていたのですが、司会者である私のあやまりで、ご講演をいただいた時点で会の終了時間の5時になってしまいました。今回、折角、参加者の皆様から私からの課題にお応えいただいたのに、皆様がご自身の意見を言える機会を作れなかったことをとても申し訳なく思っています。今後も、「博士の生き方」座談会は続けていく予定にしております。時間配分や課題設定など、今回の会は課題を多く残してしまったと感じております。次回以降は、もっとこの会に参加してくださった方々が話をできる場を作りたいと思っております。
座談会の後は、会場となったR&Dサポートの入っているビルの地階にある居酒屋で懇親会を開きました。23名の方にご参加いただきました。その後、本郷3丁目の駅前の居酒屋で軽く二次会も開きましたが、15名の方がいらしてくださいました。懇親会を楽しんでいただけていたら幸いです。
今回、ご講演いただきました、小野様、福士様、中村様、中谷様に感謝いたします。また、今回の座談会の主旨に賛同いただき協賛してくだったR&Dサポートの皆様とアシスタントとして会の運営を手伝ってくれた方々、そして、週末をつぶしてこの会に参加してくださった方々皆様に感謝いたします。本当にありがとうございました。